「はづきさん‥‥?」
それは、世間が台風に備え始めていたある平日の定時後。
283プロの事務所内には人影が2人。
いつもどおり対企業に向けたプレゼン資料作成やメール対応を残業で片付けていた俺と、事務員のアルバイトをしているはづきさんだ。 社長は局のお偉方の接待に行っている。 誰も欠けてはいけない、283プロの大事な大事なメンバーだ。 ‥‥そんな人を非正規で雇用をしている社長はどうかと思うが。
21時。 メールの対応にも一区切りついて背中を伸ばす。 営業周りで動きっぱなしだから運動不足では無いと思っていたが肩がバキバキだ。
首を鳴らし、ストレッチをしながらはづきさんのいる方に視線を向ける。 彼女も両手を組み腕を伸ばしており、どうやら同じくキリが良いタイミングなんだろう、と察する。
「お疲れ様です。 珈琲でも煎れましょうか?」
「あ~、いえいえ大丈夫ですよ~。 私、そろそろ行きますので~」
「ああ、そうですか。 今日もお疲れ様です、はづきさん」
いつもと同じように挨拶をする俺に、はづきさんはいつもどおりの緩い笑顔で、その言葉は放たれた。
「‥‥え?」
「じゃあ、そろそろ行きますね~」
「‥‥え?」
‥‥思考が止まっている間に、はづきさんは荷物をまとめて帰っていた。
その時の俺は、まだこれから起ころうとしている地獄を知らないまま事務所を後にするのだった。
ビジネスホテルの外観の写真とともに283プロのSlackに送られてきた一文だ。
家のベッドに寝転がりながらそれを眺めていた俺は、「明日の朝」というその一文がどうにも引っかかってならなかった。
「そうか、はづきさん、どこに行くんだろうな。 修行っていうからには、山奥で走り込みとか、滝行とかするのかな。 ははは」
引っかかっていたんじゃない、目を背けていただけなのかもしれない。
「明日の朝かあ。 空港近くだと見送りも厳しいなあ。 それに、明日は朝からレッスンと営業があるしなあ」
当たり前のことが、当たり前だった人がいなくなるという事実に――――。
「そういえば、明日のレッスンはどんな内容だったかなあ」
‥‥。
「明日のレッスンメニューは‥‥と」
「‥‥」
「誰が見るんだ?」
朝、出社した事務所のはづきさんのデスクには看板が立てられていた。
昨日帰った時には無かったはずだが‥‥。
予定表を見たら、はづきさんの字でびっしりと2日間の予定が書かれていた。
流石はづきさん、と言いたいが、それなら事前に連絡してくれても良かったのでは? という思いと半々になり、アンニュイな気持ちが襲ってくる。
今日、大変だなあ‥‥。
社長を除くと2人で回してるとは思えないほど、283プロも大きくなってきた。 なにせアイドルは今や19人だ。 それぞれの生活もあるからフルに稼働してもらっているわけじゃないし、アイドル自身に任せている部分もある程度あるので全てに目を通しているわけではないが、それでも殆どの予定には目を通して、可能な限り同行している。
だが、それはレッスンや事務作業を受け持っている人がいるからこそできるのだ。 2日間とはいえ不在の今、それが可能なのか‥‥。
予定を確認した俺は、改めて今日1日のスケジュールと仕事内容を組み立てる。 打ち合わせ、レッスン、収録、営業‥‥午後は外回りがメインだ。
そして改めて気づいたことがある。 今日明日フリーの子が多いということだ。
学生であるイルミネはもちろん、手のかかるあさひや恋鐘も今日はフリーだ。 仕事が回らず、細かいレッスンの日取り調整なんかははづきさんに任せることもあったが、ここまで見越していた‥‥?
どこに向かっているか全くわからないはづきさんに感謝の思いを馳せる。
あなた、本当にアルバイトですか‥‥?
「プロデューサーさん! おはようございます!」
事務所に元気な声が響く。
今日の朝一番、打ち合わせの時間だ。
俺は書類片手にアイドルを出迎える。
「ああ、おはよう」
こんばんはぷりにーです。
突発で書いたので、特にオチはない。
明日の朝、全く違う展開が待ってるかもしれないしね!
はづきさんがいないと仕事まじで回らなさそうだなあ、と思ったらつい手が動いていました。 楽しいね。
実際、明日何が起きるんでしょうね。
GWを甜花ちゃんが支配したみたいに、また誰かが代理でTwitter担当をするんでしょうか。
Pカップもあることだし、まだまだシャニマスから目が離せないですね。
‥‥で、俺のところにいつサポ摩美々は来るのだろうか。
ということで本日は以上!
また明日会いましょう!